アブダクション研究に関する最近の発展
情報学プリンシプル研究系 井上克巳

English | Japanese

日時

1月20日 (水) 12時30分から14時

場所

Seminar Room 2, 15F, NII

タイトル

アブダクション研究に関する最近の発展

概要

アブダクションは発想推論とも呼ばれており,科学知識の発見,創造的思考,推理,
談話理解などにおいて重要な役割を果たしています.哲学者であり数学者でもある
C.S. Peirce がアブダクションの論理体系を提唱して以来,アブダクションは
多くの哲学者により思考形式として分析されており,人工知能では推論技術の一つ
として使われています.本セミナーでは,アブダクションに関して最近発表者が行っ
た2つの重要な技術について紹介します.
 一つ目は,アブダクションにより多くの仮説を得た場合に,確率的手法を用いて
仮説をランキングする方法です.ここでは,説明される事象の確率を最大にするよ
うに各仮説に確率を割り当てる EM アルゴリズムを適用し,膨大な論理式のインス
タンス数に対処するために2分決定グラフを用いた手法を用いています.この手法
を代謝経路上の定性推論による阻害要素の推定問題に適用したところ,生物学者が
好ましいと思う要因を含む仮説が上位にランクされるという結果を得ました.
 もう一つの技術は,ミッシングリンクを説明する規則をアブダクションによって
発見するものです.通常のアブダクションでは,観測を説明する要因を個別の仮定
事実として推論しますが,ここではメタ推論を用いることで知識に欠けている規則
を推定することが可能です.この手法をチェロ演奏における着眼点の発見に応用し,
高度なスキルを実現するための要因を推定しています.


[1] Inoue et al., Proc. 21st IJCAI, pp.810-815, 2009.
http://ijcai.org/papers09/Papers/IJCAI09-139.pdf

[2] Inoue et al., Post-proc. 19th ILP, LNAI, Springer, 2010.
An earlier version can be obtained from:
http://www.cs.kuleuven.be/~dtai/ilp-mlg-srl/dokuwiki/doku.php?id=paper:ilp:15

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