
計算基盤技術は、これまで科学の発展のために理論、実測につぐ3つ目の手段であるシミュレーション環境を提供してきました。そして、それ自体が研究調査されてきました。一方、近年、4つ目の手段としてデータセントリックサイエンスが注目されており、そのために必要となる計算基盤技術は、これまでの演算能力を競うスパコン技術、帯域を競うインターネット技術とは別のものである可能性が高いと考えられます。つまり、データセントリックサイエンスのための異種の融合を行うシステムアーキテクチャを設計することが目標です。

従来からの計算基盤技術としてスパコンをより成熟させ、さらなる発展を期するための研究です。「世界一」とは、最大の PFlops値(1秒間に1Peta回の浮動小数点演算の実行)を持つ性能、最大のハードウェアのコスト効率、最大の電力効率、あるいは最高の稼働率(高信頼性)、等色々な視点で考えることができます。特に現在、発熱量、CO2排出量などの環境問題から、スパコンなどの高性能計算機にも省電力化が求められるようになっています。しかし、電力性能比(Mflops/W)は スパコン間で約50倍ものバラツキがあるのが現状です(データ引用:The Green500 List: Encouraging Sustainable Supercomputing, Wu-Chaun Feng and Kirk. W. Cameron (2007.12 IEEE Computer pp.50-55から)。つまり、今後はこれまでピーク性能のみを強く求めてきたスパコンの設計方針を劇的に変更する必要が生じています。
ハードウェアコスト(調達コスト)という点では、汎用の安価なPCを用いた並列分散システムである PC クラスタが専用の並列計算機(例えばIBM BlueGene/L(Top500ランキング 1位(2007/11))、国内の例ではEarth Simulator)に比べて圧倒的に良いといわれています。多くのPCクラスタではネットワークも専用の低遅延の並列計算機ネットワークではなく、コスト面から帯域の細い(GbE or 10G)イーサネットを採用しています(Top500の54%のシステムは今やGbEです)。また、稼働率、安定率という点では、冗長性を持たせることが不可欠ですが、これはハードウェアコストを増大させることにつながります。これらの側面は、トレードオフの関係にあり一概にシステム設計についての善し悪しをつけられないのが現状です。
この中で、計算機アーキテクチャ、インターコネクトの研究者として環境問題に貢献できる「省電力」、安心して使えるインフラストラクチャーを実現するために必要となる「高信頼」の2つの側面を重視した基盤技術のアーキテクチャに関する研究を行っています。






