概要

CPS時代のソフトウェア工学に関する調査研究

(CPS=Cyber-Physical Systemsの略)

2011年はCPS(Cyber-Physical Systems)という言葉が新たな広がりをみた年であった。昨年度の調査報告からわかるように、2006年頃、NSFで考案された造語である。コンピュータと実世界を連携させることで新しいサービスを生み出す考え方の規範であり、問題解決の具体的な技術アプローチを指すものではない。多様な産業応用セクターで、今後生まれてくる新しいサービスを支える技術基盤の共通技術を模索する。新しい課題とその解決技術に関して、応用研究と基盤研究を同時進行させること、基礎研究と製品化研究を両輪で進めることの重要性を強調した。北米では、目論み通りの多様な研究開発が進み、改めてCPSとは何かの整理をする段階に来たという声が聞こえる。

一方、CPSという言葉は世界的なレベルで広がりを見せ始めている。CPSと銘打った国際学会CPSWeekが成長し、2012年には北京で開催される。同時に、ソフトウェア関係の様々な学会にCPSに関わるセッションが持たれるに至った。さらに、CPSが扱う技術の社会的な重要性を認識する国が増え、研究開発支援の方法論を含む議論が進められている。そのような活動のひとつとして、ドイツでagendaCPSと呼ぶ調査研究が実施された。北米のCPSと異なり、技術領域を指し示す言葉として使われている。接続性(connectivity)の実現によって新たなサービスを創出する。同様な技術分野に関わる研究開発支援の枠組みITEA2やARTEMISが欧州域内の枠組みであるのに対して、agendaCPSはドイツ国内産業力強化を目指す。また、我が国においても、CPSを冠した調査研究が進められている。各々の国情に合わせた形で、問題意識の整理や課題設定がなされている。

本年度は、以上のような動きから、CPSという技術領域を改めて見直す。ソフトウェア工学の観点からは、オープンな異種システム統合に関わる信頼性確保が新たな挑戦課題としてクローズアップされたといえる。合わせて、関連技術の研究動向を整理する。