Chemoinformatics Group
Hiroko Satoh's Group, National Institute of Informatics
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------- NMR化学シフト予測の研究  NMR Chemical Shift Prediction

NMR予測と立体化学

合成した化合物が望みの分子構造を有しているか?天然資源から採取された化合物はどのような分子構造を有しているか?−分子構造を解析するための手法の中で,NMR(核磁気共鳴)は現在,有機化学における最もポピュラーで,有力かつ不可欠な分析手法です.
NMRの化学シフトを予測するコンピューターシステムは,様々なものが開発されています.しかしいずれも立体化学を的確に考慮できないために精度の高い予測が行えず,立体化学なしでは語れない生物活性や物性などの実践的化学研究には有効なものではありませんでした.
その根本的な原因は,コンピューターにおいて分子の立体化学を正確に表現できないところにありました.これまで,R,S表記や命名法,グラフ理論による表現,といったコンピューター上での様々な立体化学の表記法が開発されていますが,そのいずれも,有機化合物の特定部位周りの立体化学の類似と相違を表現・識別し,NMR化学シフト予測に利用するためには不十分なものでした.


立体化学の規範的表記

そこでまず,立体化学を規範的にコード化する手法CAST (CAnonical-representation of STereochemistry) を開発しました.CAST法は,分子内の二面角にもとづいたコード化法で,分子ツリーを利用する ことで,規範的にCASTコードを定義することを可能にしています.

13C NMR化学シフト予測 - CAST/CNMRシステム

CAST法を分子構造の記述の基盤として,精度の高い13C-NMR化学シフト予測を行うシステムCAST/CNMRシステムを開発しまし た. CAST/CNMRは,CASTによって分子の立体配置・配座情報を記述した分子の立体構造データベースと13C NMRスペクト ルデータベースを用いて予測を行います.CAST/CNMRは,予測する炭素原子周りの部分構造の一致する炭素原子の実測データの平均値を予測値として出力します.

CAST/CNMRシステムの予測精度

NMR化学シフトに影響を与える因子を適切に考慮することにより,実践的な要求に適う精度で13C NMR化学シフトを予測することを可能にしました.現在までに,天然有機化合物やそれらの合成中間体を中心とした複雑な構造を有する化合物への適用や,化学シフト帰属訂正,構造訂正への応用などの結果が得られています.より多くの化合物に適用できるようにシステムの拡張を進めています.

References

- Satoh, H., Koshino, H., Funatsu, K., Nakata, T., J. Chem. Inf. Comput. Sci., 40, 622-630 (2000)
- Satoh, H., Koshino, H., Funatsu, K., Nakata, T., J. Chem. Inf. Comput. Sci., 41, 1106-1112 (2001)
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