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Hiroko Satoh's Group, National Institute of Informatics
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-------- 化学反応予測の研究  Chemical Reaction Prediction

化学反応の系図

化学反応は多種多様な因子の相互作用の結果として起こり,その寄与の程度は一定ではありません.この複雑さが化学反応の予測を困難にしています.
化学反応に対する視点を変えてみましょう.これら種々の支配因子を多次元空間におけるデータとみなしてみます.すると,これらの多次元データの非線形なつながりとして,化学反応をとらえてみることもできます.
この観点から,反応支配因子の多次元空間において化学反応を系統的に分類・統合化してみてはどうでしょうか.種々の数値化された反応支配因子とそれらの間の非線形なつながりをうまく表現しモデル化することができれば,化学反応を予測することのできる多次元データ空間モデルとなりえるのではないでしょうか.こうして整理された化学反応と,これまで主に経験的に整理されてきた化学反応との関係も興味深いところです.
これまでとは違った観点から化学反応を整理することで定量的反応予測につなげることのできる地図のようなもの.それが,私達の目指す「化学反応の系図」です.

反応表現と分類

「化学反応の系図」をつくる第一歩として,シンプルな識別子により任意の化学反応を表現し分類する研究を行いました.ここでは,反応部位(化学反応によって変化した部位)の酸素原子の基本的な物理化学パラメーター(6種)の変化量によって化学反応を表現しています.自己組織化ニューラルネットワーク(Kohonen neural network)によって131件の任意の化学反応を分類しました.すると,これまでに化学者が経験的に区別してきた化学反応タイプと高い相関のある分類結果が得られました.これは,こんなシンプルな表現で複雑な化学反応がここまで識別されることを示した,化学的に大変興味深い結果といえます.

試薬機能の予測

次いで,より詳細な表現によって化学反応試薬を表現し,その作用を予測するモデルをつくる研究を行いました.反応試薬は,反応相手との静電的・立体的相互作用を数値化する,我々の開発したシステムFRAUを用いて数量化しました.FRAUで表現された反応試薬の分類結果は,作用の類似性と高い相関を示しました.この分類結果を足掛かりにCounter-propagationタイプのneuralnetworkを用い,試薬の作用を予測するモデルをつくりました.その結果,文献報告と一致する予測結果が得られ,また,これまでに報告のない反応や分子についても実際に化学合成実験を行い,予測結果と一致することも確認しています.さらに現在は,有機合成化学で実践的に利用できる試薬機能分類と予測の研究への展開を進めています.

References

- Satoh, H., Sacher, O., Nakata, T., Chen, L., Gasteiger, J., Funatsu, K. J. Chem. Inf. Comput. Sci., 38, 210-219 (1998)
- Satoh, H., Itono, S., Funatsu, K., Takano, K., Nakata, T., J. Chem. Inf. Comput. Sci., 39, 671-678 (1999)
- Satoh, H., Funatsu, K., Takano, K, Nakata, T., Bull. Chem. Soc. Jpn., 73, 1955-1965 (2000) (Headline Article)

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