Chemoinformatics Group
Hiroko Satoh's Group, National Institute of Informatics
English

------- 化学情報の可視化の研究  Visualization of Chemical Information

化学と可視化

化学は視覚的要素の強い学問分野です.化学構造式や反応式は分子や反応が抽象的にグラフ描画されたものであり,化学には不可欠な,いわば言語のような役割を担っています.また,プラスチックの分子模型は分子の3次元的な特徴を認識するための極めて重要なツールであり,化学系の研究室には必ずといってよいほど常備されており,議論や思考のために日常的に用いられています.
コンピュータによるモデリングにおいても,ボール&スティック表示や分子軌道表示などの様々なモデルが様々な市販もしくはフリーのモデリングソフトウェアに搭載され,目的に応じて使い分けられています.現在の化学系コンピュータグラフィックスの主要目的は,分子構造や計算結果を表示し,化学者間のコミュニケーションのために用いられることであり,プラスチックの分子模型のような思考のためのツールとは成り得ていないといってよいでしょう.
そこで私たちは,プレゼンテーションや化学者間のコミュニケーションの道具としてだけではなく,動的可視化やインタラクティブな操作性をもつ,化学者の思考ツールとも成り得る可視化法と化学系グラフィックスの開発を進めています.


グラフィックスライブラリ

可視化する対象や目的によっては,既存のソフトウェアの機能を一部変更したり,新たなモデルや描画を行うためのソフトウェアを構築したりする必要があります.しかし,ほぼ全てのソフトウェアはソースコードが公開されていないために,若干の機能拡張のために化学用のグラフィックソフトウェアを最初から構築しなければなりません.また,オープンソースの分子グラフィックスもいくつか報告されていますが,化学系にも十分に活用できる国産のオープンソースソフトウェアは希少でした.


ケモじゅん

そこで私たちは,これらの問題意識から,知的基盤の1つとして化学系グラフィックスライブラリ「ケモじゅん」の構築を進め,平成17年12月よりオープンソースとして公開を開始しました.ケモじゅんは,化学反応予測やNMR予測システムのグラフィックスソフトウェア開発の過程において共通基盤となりうるものをライブラリとして独立させて構築してきたものです.種々の特化した目的に対応しつつ,かつ汎用的マルチメディアライブラリ「じゅん」(株式会社SRA先端技術研究所)の全機能も継承することで,汎用性と特異性を兼ね備えたライブラリを実現しています.

→ ケモじゅん公開サイト:http://research.nii.ac.jp/~cheminfo/ChemoJun/

References

- Satoh, H., Aoki, A., Asaoka, H., J. Comput. Aided Chem., 7, 141-149 (2006) [ PDF file ]

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