今年の国立情報学研究所オープンハウスは、2019年以来4年ぶりについにリアル会場をメインとする開催となりました。例年通りRCMBも出展し、リアル会場にポスターとスライドショーを展示してオープンハウスに臨みました。

NII Open House

毎年恒例の情報研オープンハウス、2023年は6月2日金曜日と6月3日土曜日に開催となりました。

NII Open House 2023 Poster

SARS-CoV-2 (severe acute respiratory syndrome coronavirus 2, 新型コロナウイルス) が第5類指定へ移行してから最初のオープンハウス、コンピュータサイエンスパークも復活してとてもにぎやか活気にあふれた会場となりました。基調講演は、この数ヶ月でにわかに注目を集めたChatGPTを主題に選びました。くしくも、今年度から情報研所長に着任した黒橋新所長の研究分野は自然言語処理であり、タイムリーな企画といえましょう。そうそう、喜連川前所長は情報・システム研究機構の機構長に就任しました。

国立情報学研究所オープンハウス NII活動報告・基調講演

  • 日時:2023年6月2日(金) 13:00-15:00
  • 形式:ハイブリッド開催
  • 場所:一橋講堂 (東京都千代田区)

  • 13:00-13:20:活動報告
    国立情報学研究所活動報告
    黒橋 禎夫 (国立情報学研究所 所長)
    国立情報学研究所オープンハウス2023は、リアル会場をメインとしたハイブリッド形式での開催となります。オープンハウス開催にあたってのご挨拶、ならびに本研究所の取り組みを、本年新たに着任した黒橋新所長からご紹介します。

  • 13:20-13:50:基調講演
    ChatGPTを支える技術
    鈴木 潤 (東北大学データ駆動科学・AI教育研究センター 教授)
    ChatGPT (GPT-4を含む) の詳細な構築方法は公表しないと表明されており、現時点でその全容を知ることは難しい。本講演では、公式に発表されている断片的な事実情報をベースとし、憶測は憶測と断った上で紹介しつつ、ChatGPTを支える技術の動作原理や理屈をAI関連研究者/技術者以外の方を対象としてなるべく平易に解説する。

  • 13:50-14:20:基調講演
    Bing対話型検索とGPTモデル
    鈴木 久美 (理化学研究所AIP言語情報アクセス技術チーム テクニカルアドバイザー / 元マイクロソフト対話型検索プロダクトマネージャー)
    ChatGPTがその性能で世界を驚かせている中、今年2月マイクロソフトはGPTモデルをインターネット検索に応用したサービスを開始した。このサービスの開発にプロダクトマネージャーとしてかかわった経験から、大規模言語モデルがウェブ検索をどう変えたのか、その応用の利点と現時点での限界を具体例とともに考える。

  • 14:20-14:50:基調講演
    生成系AIと法制度
    生貝 直人 (一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻教授)
    生成系AIの急激な進化を受け、世界各国でルール作りに向けた議論が活性化している。本講演では、生成系AIに関する法的論点を概観した上で、特に包括的なAI法制であるAI規則案の立法作業が進むEU(欧州連合)の状況を参照しながら、生成系AIに関わる法制度のあり方について考える。

RCMBの発表

NII Open House 2023 RCMB Poster

RCMBにおけるCOVID-19対応の一区切りとして、COVID-19肺炎CT画像サーベイランスについて経緯と結果を詳しく発表しました。このサーベイランスは、クラウド基盤に医療画像が付帯情報と共に毎日送られてきている環境を活用しています。クラウド基盤に医療AIを常時稼働する仮想環境を用意し、日々転送されてくるCT画像を自動で解析してCOVID-19肺炎の典型度を判定します。このプロジェクトの詳細は別記事にまとめてあります。

SARS-CoV-2が第5類へ移行したことを機に、COVID-19はそれまでの全数把握から定点把握へと切り替わりました。全国約5,000の定点医療機関から1週間単位で報告されるCOVID-19感染者数を集計し、定点当たりの報告数を毎週発表しています。定点把握の目的は市中感染のレベルとトレンドを知ることで、本サーベイランスと同じ目的です。サーベイランスは定点把握を補完し、日毎の感染動態を示すものとして有効です。さらに、定点把握は医療機関からの報告を必要としますが、サーベイランスは画像の自動判定をベースとするために個々の医療機関による追加の業務は発生せず、迅速で安定した結果が期待できます。今後は学習データにオミクロン株による症例を追加し、肺炎症状の変化に追随して判定精度を維持したサーベイランスシステムへと改良する予定です。