Research
研究紹介
データ中心人間・社会科学(情報・システム研究機構 新領域融合研究センター)
研究紹介写真高度な情報通信技術によって、あらゆる情報機器やセンサがネットワークへ接続され、情報がデジタル化されて流通し、いつでも、誰もが、どこからでもアクセスすることが可能となった。この結果、情報空間 (Cyber-space)と実世界 (Physical-world) が連携、あるいは統合した「サイバーフィジカル融合社会(Cyber-Physical Integrated Society)」が形成されつつある。
この融合社会では、実世界の現況や人と社会の活動を情報世界に映し出し、情報の力によって、人類が直面する環境・エネルギー、医療・健康、食糧問題などの対策や新たな価値創成を行うことが期待される。
そのためには、人間・社会の挙動をセンシングし、そのデータを中心とした分析を行い、人やモノを制御する情報を合成し、迅速かつタイムリーにフィードバックする技術的・社会的仕組みが必要となる。
そこで、人間・社会における合理的な意思決定や判断をデータに基づいて支援するため、急速に普及するスマートフォンやWebやSNS、多様なセンサから収集される多種多量なデジタルデータの収集、保存管理、分析、合成を可能とする情報・システム科学と人間・社会科学の融合による新しい学問領域の科学的研究手法の創成を目指す。
クライシスに強い社会・生活空間の創成(JSPS 先導的研究開発委員会)
研究紹介写真現在、東日本大震災からの復興に関連して、安全で安心な社会を構築すべく様々な研究開発や復旧計画が立案されている。ただ、それら計画の多くは既存の社会基盤やハードウェアの再構築に偏っており、既存の社会システムからの脱却をはかる考え方はなされていない。
大災害や社会危機などのクライシスと呼ばれる事象に対しては、従来の概念にとらわれず、復元力の強い社会・生活空間を構築するための新たなアプローチが重要である。そこで、先導的な学術政策として可及的速やかに新たな観点から研究開発を推進するプロジェクトが、青木利晴(日本学術振興会(JSPS) 産学協力総合研究連絡会議)とNIIを中心に提案された。
現在、JSPS 先導的研究開発委員会「クライシスに強い社会・生活空間創成の研究開発(委員長:安田浩)として検討の場が創設され検討が進められている。
Webデータ駆動の観光予報システム
研究紹介写真「観光予報システム」は、Web/SNSサイトが公開している施設利用情報を横断的に収集・蓄積し、分析することで、観光地域の宿泊状況や施設料金の現況や予報を行うシステムである。
地方自治体は、観光政策決定で必要となる宿泊利用状況の把握や経済効果の予測、観光地における災害発生時の宿泊者数の把握や、避難施設の空き状況が把握に利用できる。
また、利用者は、観光案内と同じ使い方で災害対応に利用できる。このことから、本システムは、情報システムの常用性を実現し、平常時と災害時の対応を両立することができる。本研究開発は、京都市観光MICE( Meeting, Incentive, Convention and Event)推進室との調査研究協力により実現されている。

なお、本システムは、国立研究開発法人 情報通信研究機構 ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発に採択された。
研究開発課題名:ソーシャル・ビッグデータ利活用基盤技術の研究開発
個別課題:課題B 新たなソーシャル・ビックデータ利活用基盤技術の研究開発
副題:ソーシャル・ビッグデータ駆動の観光・防災政策決定支援基盤の研究開発

*詳細は【こちら】を参照のこと。
時間軸および空間軸におけるプライバシー情報保護活用基盤(IDデータコモンズ)
研究紹介写真蓄積されたライフログに対して、災害時や緊急時に必要となる個人情報や属性情報の利活用が困難になっており、東日本大震災では、迅速な避難・救助活動の阻害要因の一つとなった。このため、災害時や緊急時において、通信を介して個人情報を利活用できる情報システムが求められている。
そこで、時間軸(災害など緊急時)における個人情報保護活用基盤として、行政や民間と個人のライフログデータを連携させて一元管理し、ライフログ利用が自律的に地域分散で判断処理できる社会インフラを研究開発する。
一方、空間軸(実世界における特別な場所(駅、商業施設、テーマパーク、アウトレットなど)における個人情報保護活用基盤については、プライバシー情報の中でも人間の内面的な情報(趣味、嗜好、行動傾向、購買傾向など)を積極的に開示可能な特別な場所において、ソーシャルメディア(SNS)とセンシングデータの融合、プライバシー保護のためのデータのクレンジング、時空間DBの構築とマイニング、情報活用・情報推薦の手法を要素技術とし、ユーザの個人情報の開示とユーザの得る利得がマッチする空間軸での個人情報保護活用基盤として構成する(大阪大学 馬場口 登教授 NII 越前 功 准教授との共同研究)。

なお、本システムは、国立研究開発法人 情報通信研究機構 ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発に採択された。
研究開発課題名:ソーシャル・ビッグデータ利活用基盤技術の研究開発
個別課題:課題B 新たなソーシャル・ビックデータ利活用基盤技術の研究開発
副題:ソーシャル・ビッグデータ駆動の観光・防災政策決定支援基盤の研究開発

*詳細は【こちら】を参照のこと。
救急医療データ連携と技術標準
研究紹介写真緊急医療の現場では、患者の容態をいち早く搬送先病院に伝えること、救急車・ドクターヘリ・ドクターカー・受入れ病院間でのスムーズな救急医療データ共有が、救命率の向上につながる。救急医療分野においては、接続機器やアプリケーションの充実に伴い増大するネットワークトラフィックへの対応、救急医療情報システムの導入・運用コストの低減、医療機器とデータ伝送機器の標準化、個人情報保護と活用など解決すべき課題も多い。このような課題解決を行い、本システムを高知県医療再生機構と連携・協力して社会実装した。
本システムは、救急医療のみならず、大規模災害発生時の緊急医療データ共有へ適用できる。また、スマートフォンやタブレットを活用した医療情報システムは、特殊な技術力を必要とせずに在宅医療や介護ビジネスへの展開も可能となり、業務改善や雇用促進につながる。
この取り組みは、特殊車両、医療情報連携システム、医療・介護システムの構築、運用を含む典型的なパッケージ型の輸出モデルであり、広く海外に展開することが期待されている。