一般社団法人 日本眼科医療機器協会にお誘いいただき、第60回 日本網膜硝子体学会総会に併設された機器展示会を見てきました。

AMEDプロジェクトのなかで日本眼科学会とNIIの共同研究で研究開発した眼底写真解析AIを社会実装して普及を図るためには、眼底写真撮影装置や診療ワークフローなどへの組み込みが必要です。しかし、学術研究の枠組みで得られた成果をそのまま医療機器に組み込んで商用利用することは、現今の日本の法制度のもとでは困難です。さらに、医療データの収集から医療AIの社会実装までの流れの中には異なる役割を帯びた多数の機関や団体が存在し、これらのプレイヤーを円滑に連携する仕組みが必要です。

JOI RegistryとG-Data

そこで、日本眼科学会は一般社団法人 Japan Ocular Imaging Registry (JOI Registry)日本眼科AI学会を、日本眼科医療機器協会は合同会社 G-Dataを、それぞれ設立しました。JOI Registryは眼科の医療データを収集するインフラを整備し、日本眼科AI学会は眼科領域のAIの研究開発を継続するための学術支援を担います。G-Dataは医療AIを社会実装するためのビジネスモデルを確立し、薬事承認や製造販売を目的にJOI Registryと共同で活動しています。NIIはJOI Registryを通じてクラウド基盤にデータを受け入れ、日本眼科AI学会とも連携しながら眼科領域のAIを研究開発しています。クラウド基盤を利用して得られた医療AIは日本眼科AI学会を通じてG-Dataへ提供され、社会実装へ向けた様々な課題を解決します。

デモの内容

今回は機器に組み込む前の段階で、薬事承認を得るための技術検証としてスタンドアローンのPC上で動作するデモでした。一つのフォルダに集めた眼底画像をバッチ処理で判定します。クラスは正常眼底と11の眼底疾患からなる12クラスを分類し、画像ごとに各クラスの確率 (0~1) を出力表示する仕様でした。ただ、この出力形式では薬事申請に通らない可能性が高く、工夫する必要があるそうです。

demo

エンジンにあたるAIをNIIで開発しています。実は、機器展示の会場でいくつかの眼科機器メーカーのご協力を得て展示していた眼底写真撮影装置で私たちの眼底を撮っていただき、その画像をデモにかけてみました。私の右眼は出生時のアクシデントで生後の発達が十分ではなく、視力はほとんどない状態なのですが、やはり何らかの異常がある (加齢黄斑変性症) との判定でした。また、緑内障を患っている身内が何人かいて、私自身もリスクが高いと認識しています。実際に左眼に緑内障の判定があり、後日、眼科医に同じ眼底写真を診てもらったところ、視野検査を勧められました。近日中に検査を受けるつもりです。

研究開発中の12クラス分類AIは眼科における診断というよりも、健診におけるスクリーニングでの利用を目的にしています。その意味では、私の事例は目的を達成する成果を得つつある証左と考えています。早く機器へ組み込んで社会実装できるよう、これからも努力していきたいとおもっています。