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研究活動 研究テーマ

学術手話通訳のいろは

 私たちの日々の研究活動には学術手話通訳が欠かせません.世の中には「学術手話通訳って何?」「どこから派遣してもらえるの?」といった疑問もまだまだ多いはず.私たちの研究室でこれまでにお世話になった学術手話通訳の記録をここに記します.

手話通訳者に仕事をお願いするときのイメージ

 たとえば主催者として読書会を開くときのことを考えてみると,「やろう」といっていきなり通訳者を派遣してもらえるわけではありません.手話通訳派遣はおおまかにこの図のような流れで行い,全部で5つのステップがあります.

手話通訳派遣の流れ
図1: 手話通訳派遣の流れ (クリックすると拡大します)

ステップ1: 企画の立案

 イベントの企画段階での概要を大まかでもかまわないのでまとめておきます(e.g., 日時,場所,内容,遠隔通信による参加の有無など).これは可能な限り早めにしておくことが望ましいです.

ステップ2: 概要の連絡

 次に主催者は通訳者派遣を要請するためにはコーディネータとよばれる人に連絡を取らなければなりません.ステップ1でまとめたイベントの概要を,コーディネータに伝えます.この段階での注意点は,参加が見込まれるろう者の人数やテーマになる論文・発表などの内容を,できるだけ具体的に伝えることです.また可能であれば発表資料も添付しておくと通訳者が事前準備をすることができるので,よりよい通訳環境をつくることができます.特に高度に専門的な議論が予想される場面では,事前の資料が必須です.

ステップ3: 募集と調整の開始

 ステップ3ではコーディネータが通訳者たちに連絡をとり,メーリングリストやウェブ上での予定調整が可能なサービスを用いて募集と調整を開始します.連絡を受け取った通訳者は,募集のあった日時や条件を見て通訳業務の受託可否を返答します.

ステップ4: 派遣の決定

 ステップ4ではコーディネータが伝えられた諸条件,通訳者の能力などをもとにして,通訳業務の参考見積書を作成し,当日業務が可能な通訳者の連絡先とともに主催者に送付します.

ステップ5: 開催

 最後の最後に,ようやく読書会の開催です.通訳者にはペットボトルのお水を忘れずに用意しておきましょう!

参考

 世の中にはビジネスとして手話通訳を派遣するサービスもあります.私たちの研究室では研究費で雇用したコーディネータが上記の業務を行っています.私たちの活動について詳しく知りたい方は,jsl-coordinator [at] nii.ac.jpまでご連絡ください( [at] を@に変えてください).


【紹介実績】
2012年度 「樹のシンポジウム」 
2013年2月10日(日)国立民族博物館 第4セミナー室
リンク:http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/news/rm/20130210
紹介手話通訳者人数2名
2012年度 「ろう児のバイリンガル教育研究会」 
2013年1月25日(金)名古屋市立大学滝子キャンパス1号館(人文社会学部棟)202教室
紹介手話通訳者人数2名
ワークショップ: 日本手話とオーストラリア触手話の順番交替
2013年1月15日(火) 10:00-14:00 国立情報学研究所(学術総合センター)
リンク:http://research.nii.ac.jp/~bono/ja/event/jsl-auslan.html
紹介手話通訳者人数2名
2012年度 日本歴史言語学会第2回大会 
2012年12月8日(土)~ 9日(日)千葉大学西千葉キャンパス 総合校舎
リンク:http://www.jp-histling.com/Pages/default.aspx 
紹介手話通訳者人数3名

関連プロジェクト

JSTさきがけ「インタラクション理解に基づく調和的情報保障環境の構築」(2009-2013)
情報機器の発展はろう者の生活に大きな変化をもたらしてきている.例えばポケベルや携帯メールは外出先での連絡を可能にし,自宅でFAXを待つ従来の生活を一変させた.今後は映像通信技術の発展に伴い,手話を用いた映像による社会参画の機会が増えると予想される.本研究では遠隔地にいるろう者と聴者が対等に議論可能な場として,映像通信技術を用いた調和的情報保障環境の構築とそのガイドライン作成を目指す.
さきがけ領域ページ: http://www.human.jst.go.jp/
学術領域における専門用語の手話表現とデータベース構築の研究
平成23年度科学研究費助成金,若手研究B,代表者: 菊地浩平 (研究課題番号:23700135)
 本研究課題ではろう者と聴者とが参加する学術ミーティング(e.g., 読書会,研究大会,ワークショップ等)での専門用語通訳に資するデータベースの構築を目的としています.日本語-日本手話通訳においては各研究領域における手話表現は必ずしも共通したものが用いられているわけではありません.また定まった表現のない用語は個々の手話通訳者がその場で作り出す表現によってその都度解決されているのが現状です.したがって,解決に至る現場での言語使用を明らかにすること,参加者間で合意された専門用語の手話表現を収集すること,それらをデータベースとして参照できるようにしておくことが,学術領域での手話通訳をよりよいものにしていくことにつながります.(詳細は科学研究費助成事業データベースへ)

主たる業績

  • 菊地浩平, 坊農真弓 (印刷中) 「相互行為としての手話通訳活動: 手話通訳者を介した聞き手獲得手続きの分析」『認知科学』Vol.22, No.1(特集: フィールドに出た認知科学)